好きな男の話 2

好きな男の話をすると、「えっ前好きだった男はイベント行くのやめたん?推し変?」みたいなことをたまに言われるけど、好きな男のこと追わなくなっても永遠に好きでいたらあかんか?いいです。

前積極的に追っていた男は、私が舞台に行くようになるきっかけになった舞台で好きなキャラをやっていた男です。当時は今より2.5次元のこともわかはいのことも知らなかったし、男はマメにSNSを更新する人だったので「男が見たい」というよりかは「キャラクターの新規絵が見たい」的な気持ちでツイッターをフォローし、何か裏話的なことを聞きてえと思って生放送を見ていました。

前の記事で、今追っている男のことを書きましたが今追ってる男と違って、この男は人の善性みたいなものを全く信用していないことがハッキリ分かります。人を信用していない人でないと、人に優しく出来ないんだなって思う。何をもって優しさとするかって難しいですけど「どんな年代、性別の人に対しても人当たりよく、誰も不快にさせない」ことを優しさと仮定するなら本当に優しい人間です。ドライな優しさ。東京生まれなのすげえ分かるな。

「俺のかわりなんていくらでもいると思った」「仕事があるならなんだってやります、幸せです」「俺は運が良かっただけです」など、世界も自分も信用していない発言をよくする男です。演技や、普段話している事柄、雑誌のインタビュー(当時は雑誌をよく買いました)を見ていると、自分の表現したい世界や、自分のやりたいことみたいなものが全く見えなくて不思議でした。今大多数の人が自分に対して望む自分の姿を体現しようとするので、結局その人が何なのか分からないんです。

「自分を見てほしい」「誰かの特別になりたい」みたいな気持ちが根源にあってそれが表現活動の動機の人間、わかはい見てるとまあおるなあとは思うし、そういう気持ちがないと人の前に立つ仕事は出来ないと思う。ただ、そんな曖昧模糊でなんの保証もないもののために何でもかんでもしてよくぶっ倒れてる人間、あんまりおらん。不健康。ぶっ倒れるのは良くない。(当時は事務所がしっかりしろと思っていました)

エリザベートを観たんですけど、エリザベート観て、今書いてる男のブログを書きたいなって思った。エリザベート観てると思い出しました、男のこと。それすら演出の術中って感じがしますが…。

本当の彼、というものが2、3年追ってたのですが結局分からずじまいでした。そもそも本当なんて無いんですけどね、人間。私の悪い癖です。傲慢ですみません。

私が好きになった時は丁度売れはじめる直前という感じで、イベントのチケットはどんどん取りづらくなるし、生放送のコメントは荒れるし、掲示板とか嫌なアカウントとかに疎かった私の目にも入ってくるくらい界隈が荒んでいって、その空気に耐えられなくて追うのをやめてしまいました。でも今でも本人自体のことは結構好きです。

私は負け戦はしたくない人間です。多分男も負け戦したくないタイプの人間のような気がします。勉強していい大学を出て、親の猛反対を押し切り5年だけ芸能活動やらせてくれと事務所を片っ端から受けて急にテニミュになり、急に靭帯が断裂して、テニミュの次の舞台で自分と殺陣のクライマックスをする予定の役者が降板になりひとりで殺陣をして過呼吸になり、それでも今ゴールデンタイムのテレビに出たりしてるのを見ると、勝負強いなって素直に思います。事務所辞める前の配信で、「運が良かっただけ」と言っていて、そうかもしれないけど、数を打ったから当たったんだと思います。

等身大の雰囲気を持ちながら、象徴として生きることを是とする才能を持って生まれてきた人間だと思う。かけだしわかはい(最初に言うとそのわかはいのこと嫌いなわけではないよ)に、「ラッキーボーイ!羨ましい!」と言われていたのを見てハ?になりました、私が。舞台経験も無い、ダンスも歌も上手いわけではない、年齢が若いわけではないけど、そういう自分に誰よりも自覚的でそういう「普通」の自分が世界で「特別」になるための最短ルートを本当に最短で走った人間、羨ましいって私は言えないです。無茶やもん。ラッキーじゃない、誰よりも打算的で強かで、努力できる人間なだけやもん。などとオタク特有の最悪な母親ヅラになったりしておりました。恥ずかしいな。

いつも人当たりのいいことしか言わんのに、他人の夢や人生に対してめっちゃ冷たいところが私は好きでした。役者になりたいっていう相談に、「年を食ってたら役者は難しい」って言うとことか、ヒモの彼氏と別れられないっていう相談に「結局自分が決めることですよね」って言うとことか、アー社会を生きてる人だな、他人のことどうでもいいんだろうなって、安心するんです。

何かで社会的に成功する人間は孤独であってほしいという貧乏人の勝手な願いを体現している。でも彼もどこか誰も知らないところで、幸せであるといいなあ。おわり。